KUMAGAI_Tsuyoshi / Kalos Gallery

会期
 2014年12月6日(土)~12月28日(日)
 13:00~19:00 月曜日休廊
 入場無料


終了しました。

熊谷毅写真展 「Crawl」

 自然から生まれたはずの人間が作り出すものを指して「人工」と呼び、これを「自然」の対義語として位置づけているのは、その影響力の大きさをわたしたちが自覚しているからなのだと思います。しかし、自覚していながら、日々の営為の中ではそれを制御することをなおざりにしてしまっているような気がするのです。

 たとえば、日々繰り返される交通渋滞を目にしたとき、世の中にこれほどの自動車が果たして必要なのだろうかと疑問を抱きます。あるいは、座礁したタンカーから大量の油が流出したというニュースを耳にすると、海に暮らす生き物たちの油まみれの姿が目に浮かび、暗澹たる思いを禁じえません。

 これらはわたしたちの暮らしを維持するための世の中の仕組みに生じた、ほんの少しのほころびなのかもしれませんが、生き物としての生を遠い未来まで繋いでいくために必要な慎ましさが損なわれているのではないかと、つとに感じていました。

 そんなおり、何の気なしに空を撮った写真を見返していると、まるで水底から水面を見上げて撮影したかのような1枚に気が付きました。考えてみれば、わたしたちが住むこの地上は大気に満たされた海の底といえます。はるか遠い祖先は、進化の過程で海から陸にあがりましたが、現在を生きるわたしたちもまた、大気を抜けてさらなる高みの宇宙に進出する知恵と技術を手に入れつつあります。しかしこれはいままでの進化と違い、わたしたちの生き物としての身体が宇宙に適応したわけではありません。依然として、生身の身体は地上、すなわち大気の底を離れて暮らすことはできません。だからこそ、慎ましさを大事にしなければいけないと思うのです。

 「crawl」には、競泳の自由形で泳がれている「クロール」の他に、「地面を這いまわる」という本来的な意味があります。世界中を我が物顔で飛びまわっていながら、実際は大気の底をせわしなく行き交っているだけのわたしたちを端的に表しているようなこの言葉を、本展のタイトルとしました。

 作品は、大気の底を這う生き物の目で、見上げ、見下ろし、見つめた光景を切り取ったものに他なりません。これらがご覧いただいた方々の記憶に留まり、日常の中に新たな視点がもたらされたのであれば、それは私の願うところです。


熊谷 毅



カロス・ギャラリーは、宮城県仙台市在住の写真家 熊谷 毅(くまがい つよし)による個展
「 crawl 」を開催します。

さまざまなアート作品が時代を写す象徴と成り得たり、人々に疑問や考察を投げかける存在であるのは、その作者自身が時代の当事者のひとりとして、感じ、考え及んだこと、或いは将来に繋がる何ものかを、自らの意思や哲学として内包しているからに他なりません。そして、それらが生まれる原点の多くには、既知の情景や存在、思想や行動に対して、ある種の違和感や危機感を覚えるような出来事やきっかけが存在しているものです。極めて個人的な事情であったり、社会全体としての動きの中に見出したりもするわけですが、これまで漠然と思い巡らせていたことを、明確に意識として感じた瞬間とも言えます。

熊谷が過去に発表してきた作品に共通していることは、この瞬間に鋭敏に反応し、はばかることなく対峙し、自身が持つ写真という手段を用いて、愚直なまでにありのままに写し撮り、そこから導き出された自らの答えを押しつける素振りもなく提示している点です。モチーフは、座礁した船舶(JANE is Here)、小さな虫たち(Small Wildlife -小さな野性-)、雨や水といった現象とそれらに取り巻かれた世界(水の惑星)、今まさに羽ばたかんとしている鳥の姿(Physical Description)など様々ですが、描こうとする世界やその意味は、決して奇をてらわずに明確なテーマ性を有しながら作品化、構成されています。実はこのこと自体、作家としての非凡な才能を感じさせると同時に理論的かつ思慮深い考察や繊細でち密なプロセスがなければ成しえないことでもあるのです。熊谷は感覚的とも言えるある種のきっかけを元に、写真として具体化するための可能性を検討し、ここから生まれた作品を精査しながら、ジグソーパズルを組み立てるように伝えるべき思いを形づける能力に長けた写真家と言えます。

さて、「crawl」と題された2度目となる個展でのモチーフは、後述するステートメントにもあるように空、或いはそれを見つめている行為、状態です。それらに考え及ぶきっかけになったこととして、先の大震災があったかどうかは定かではありませんが、いやがうえにも影響はあったのではないかと想像します。また、「crawl」の意味するところも、観る方々によっては多重性を有しているように感じられるかもしれません。しかしながら、観る側が思考すること自体アートの意義であり、さまざまな解釈の中で理解されていくことも作品として持つ定めであると考えています。とは言え、展示される作品それぞれが違った方向を持ち、とりとめの無い場所へ導かれるわけではありません。熊谷の思いになぞられた思考の旅へと誘われ、それぞれの目的地に辿りついたその瞬間、きっかけと言うべき何ものかを発見することでしょう。

展示作品はインクジェット・プリントによる大判6点を含む約27点を予定しています。静寂な空間に置かれたさまざまな形に切り取られた空の中に、熊谷自身の思いの一端が感じられたなら、この余韻を引きずりながら外へ出られたその時に、あなたはふと頭上の空を見上げているかもしれません。


多くの方々のご来廊を心より願っております。




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○作品仕様
プリント:アーカイバル・インクジェット・プリント
印画紙種類:ピクトリコ GEKKO シルバーラベル
印画紙サイズ:A4、A3ノビ、B2
予定作品点数:27点

○プロフィール

熊谷 毅 KUMAGAI Tsuyoshi

1976年 秋田県生まれ
仙台市在住

2007年頃から独学で写真を撮り始める。
2009年 Art Photo Site 主催ファイン・アート・フォトグラファー講座受講

E-mail: oursvallee@gmail.com



○出展歴

【個展】
2012年 「Small Wildlife -小さな野性-」・富士フイルムフォトサロン仙台

【グループ展】
2010年  JANE is Here (Sha-gaku)*
2011年  水の惑星 (Sha-gaku vol.2)*
     Physical Description (Sha-gaku vol.3)*
2013年  ‘Hope for tomorrow’によせて ( Hope for tomorrow 写真展 Chapter-2)*

【その他の主な展示】
2012年 JANE the Stranded (Gallery Selection Scene-2)*
2013年 ART DUBAI出展・ART DUBAI(UAE・ドバイ) 
     PHOTO FAIR EINSTEIN出展・Turner Gallery(東京)

*印の会場はカロス・ギャラリー

 

Opening Partyのご案内!!

本個展を記念して、Opening Party を開催します。

 日時 12月6日(土) 19:30 - 21:30 (延長あり)
 場所 カロス・ギャラリー内
 参加費 ¥700 
 予約不要、入退出自由、差し入れ、持ち込みは大歓迎です。

宜しくお願いいたします。

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